ai amuのこと―川崎富美子さんと藍染め― 第2回
創喜のブランドの中でも特別な存在感を放つ「ai amu」。
創喜のくつ下づくりの技術を生かしたアイテムを、徳島県産の本藍を使って丁寧に1枚ずつ手で染めあげています。
弊社専務が藍染の魅力にひかれて「藍染の素晴らしさを若い人たちにも知ってほしい」と思ったのがきっかけとなりai amuという藍染商品のブランドが誕生しました。
今回はai amuを染めて頂いている藍染師「藍染工房 京ふう美」の川崎 富美子さん
の元へ、本商品の染め技法やこだわりについて取材に伺いました。
藍染は名前のとおり「藍」という植物を使って染める技法です。
世界中で色々な種類の藍が育てられていますが、日本で主に使われているのは「タデアイ」という品種。
最近では「トリプタンスリン」という成分に抗菌効果があるとされ、注目が集まりつつあります。
このタデアイを発酵させてつくられるのが「スクモ(藍玉)」です。
スクモに灰汁と石灰を加えてしっかりと練りあげるのですが、これがなかなかに根気のいる仕事なのだそう。
そして、あらかじめ温めておいた灰汁を甕に入れ、練りあげたスクモを加えていきます。
最後にお酒を振り入れて、藍建ての初日が終了します。
次の日から毎日甕の中を撹拌し、こまめに様子を見ながら育てていき、3〜10日ほどかけて発酵させます。
この工程を「藍建て」といい、完全に建った藍甕(あいがめ:藍を発酵させるための大きな容器)には表面にブクブクと藍の花(あいのはな:発酵によって藍甕の表面に浮かぶ泡)が咲きます。
川崎さんの工房には大小いくつかの藍甕が置かれていて、中を覗くと複雑で美しい色の藍の花が咲いていました。
藍甕の中に布を漬けては引き上げ、空気に触れさせ、これを繰り返すことで濃い色に染めることができます。
濃い色になるほど手間と時間がかかるんですよ。
上から下へ色の濃淡をつける為に、一定の速度で布を漬けては引き上げる動作を繰り返します。手の動きを止めてしまうと、色の段差がはっきりと出てしまうので、綺麗なグラデーションにはなりません。川崎さんの技術が詰め込まれている染め技術です。
染めあがったものをすすいで干します。
一度染めならこのくらいの色合い。
乾かすともっと薄くなるので、「ぼかし」なら10回ほど重ねて染めます。
「夕方見たらちょうどいい色だったのに、朝見たら思っていたより薄かった」なんてこともあるのだそう。
「天然藍染アームカバー しぼり」は、決まった箇所をしっかりと色が入らないように紐で縛って染めています。
商品ごとにしぼりの位置がズレないように、特製のものさしに合わせて作業をされていました。
縛ったところが外れてしまうと台無しになってしまうので、しっかりと結びます。
この作業は10枚や20枚重ねて縛ってしまうと、きれいに模様が出ないので、一度に縛れるのは4枚ほど。
染めるときには絶えず触ったり揉んだりして、布についた気泡を取っていきます。
取らないと、不必要な色ムラが出てしまうのだそう。
次は「天然藍染アームカバー だいあ」。
特徴的な直線がオシャレなこの柄を生み出すのは「板締め」という技法です。
アームカバーを3枚ずつ板に挟み、きっちりと万力で固定します。
板からはみ出した部分が染まり、挟まった部分は染まりません。
染める部分は重なった布を1枚ずつめくって、気泡をとるために触ってあげます。
だいあの濃い部分は20回以上重ね染めされています。
気の遠くなるような作業が、くっきりとした幾何学模様を生み出しているのですね。
「天然藍染ソックス」はぼかしの技法で染められています。
分厚いくつ下なのでたくさん気泡が出てきます。そこが難しいところです。
リブ編み部分にもしっかりと色が入るよう、手間をかけておられるそう。
しっかりと何度も何度も手で揉み込んで気泡を押し出し、美しいグラデーションに染めていくところが川崎さんの腕の見せどころです。
吉野葛和紙や綿など使われている素材の違い、スラブ糸の太い細いでも色の出方が少しずつ違い、藍色に深みをプラスしてくれています。
「天然藍染スカーフ ぼかし」も、アームカバーやくつ下と同じぼかしの技法が使われていますが、違うところはサイズの大きさ。
アームカバーやくつ下と異なり、手で持って藍甕に浸すことができません。
スカーフの場合は、縦方向に等分に折って竹棒の両端に針のついた伸子(しんし)でピンと張り、横幅を狭くして藍甕に浸します。
また、折り目部分や表に出ている部分は濃くなってしまいがちなので、途中で折り目をずらしたり表裏を逆にしたりして、色味が均等になるように調整しておられます。
シンプルなグラデーションをつくりあげるための、手間と複雑な技法の数々に驚きました。
最後は、「天然藍染スカーフ さざなみ」です。
専務が「ずっとどうやって染めておられるのか知りたかった」と言うほど個性的な柄。
使われている道具は、なんとメッシュの傘立て!
蛇腹に折ったスカーフを、メッシュの傘立てにしっかりと詰めながら巻きつけていき、その状態で染めるのだそう。
ゆるくなると不要なところに色がついてしまうので、締め込みは体力勝負です。
さて、どのアイテムのどの柄も、川崎さんの時間と情熱がぎゅっと詰まった、爽やかで深みのある藍色。
どれも一朝一夕で染められるものではないのだな…と感動しました。
ぜひ皆さんもai amuのアイテムを通して、藍染の世界に触れてみてくださいね。
取材に応じてくださった川崎さん、ありがとうございました!
「藍染工房 京ふう美」
〒621-0846 京都府亀岡市南つつじケ丘大葉台1-7-1
MAIL:kyoufuubi.aizome@gmail.com
FAX:0771-25-8828